ツリーフルのオーナー菊川曉(きくがわさとる)が子供の頃に持った夢、それは「ツリーハウスを作ること」でした。絵本「おおきな木が欲しい」を幼少期に読み、自分も大きな木にツリーハウスを作りたいと思った。しかしそのツリーハウスは自分のために作るだけではなく、ツリーハウスに来た人たちに自然の素晴らしさや自然と人間の共存の大切さを知ってもらいたいという思いがあったため、ツリーハウス作りに着工した2014年の当時から「ツリーハウスのリゾート」を作ろうと決心していた。
ツリーハウスを作るために一番肝心なことは?大きな木を見つけること。
曉は手付かずの原生林が残る、沖縄北部に着目し、まずは木探しから始めた。沖縄の不動産屋に聞いても、木は生えているが大きいかどうかは分からないとしか答えが返ってこない。一緒に大きな木を探してくれる沖縄の不動産屋に出会い、北部の山林を周りました。今のスパイラルツリーハウスのホストツリーとなるアカギの大木を見つけた時曉は木に抱きついて、これだ!と思った。
娘の万葉は小さい頃から父曉に自然の中の遊びに毎週のように連れて行ってもらい、自然に育てられ、当時から自然に恩返しをしたいという気持ちがあり、着工のきっかけにもなったコスタリカのツリーハウスリゾートに父曉と行ったり、沖縄で木を探しツリーハウスを施工する作業から手伝った。
曉は、物作りは幼少期から好きであったが、人が寝泊まり出来るツリーハウスを作るほどのスキルはなかったため、最初は失敗の繰り返しであった。最初に出来たのが、今のパーティーツリーデッキと呼ばれるツリーハウス。5本の木をつなげて地上2.5メートルの高さに幅4メートル奥行5メートルの木の上のウッドデッキが完成した。その上にテントを設置し初めて雨がしのげる簡易なツリーハウスが完成した。
スキルを上げるため、YouTubeで工具の使い方や作り方を学び、次に取り掛かったのが、ツリーフルの土地の購入を決めた決め手となった美しいアカギの木に、螺旋階段が付いているスパイラルツリーハウスのデザインと施工。
ツリーハウスのデザインのこだわりは「本物のツリーハウス」であること。
すなわち、ツリーハウスは生きた木がツリーハウスの全てを支えるべきであって、地面につく柱があってはツリーハウスとは言えない、ということである。その上、アカギの木の形に合う螺旋階段をどうしてもつけたかった。そこで思いついたのが、ツリーハウスと螺旋階段を木の枝からワイヤーで吊ること。雨漏り問題は色々な方法を試して、不織布を使用するシステムで解決し、特許を取る。デザイン性にこだわりを持ち、NASAの安全基準(「ワン・フェイル・オペ、トゥー・フェイル・セーフ」。つまり、1つ故障が起きてもミッションは継続、2つの故障が起きても安全を保てるような設計)を満たし、数年の試行錯誤を経てやっとスパイラルは完成した。
同時に進行させていたのが、エッグハウス。曉は大学時代からヨットを趣味としていたので、ツリーハウスを作ることが合法か定かではなかったツリーフルプロジェクト当初に考えたのは、「船を作り、船を木の上に置けばいい。船の駐艇場所はどこでも良いはずだ。」卵の形の理由は、卵は何が生まれてくるかわからない、夢の詰まったものだから。自分でデザインし、牛乳パックを溶かし模型を作り、それを横浜の船大工に持っていき施工してもらい、実際に沖縄の海でエッグハウスを操縦し小型船舶として登録。それを今ツリーフルが所在する名護市源河に運び、木の上に置いたのだ。
その頃には最初と比べツリーハウスビルダーとしても腕は上がり、ビルダーのチームも増員し、一番最初に作ったパーティーツリーハウスをもっと本格的なツリーハウスに改造したくなり考えついたのが、パーティーツリーデッキの二階の部分にある廊下「12角形回廊」である。直線の板を敷き詰めれば簡単に廊下になるところを、わざわざ手間は何倍もかかる12角形にするのは、曉のこだわりである。形は、脊椎動物の骨からアイデアを得た。クジラの背骨と、あばら骨を想像するとわかりやすい。人間は動物や生物から得られる知恵や仕組みが沢山あるというメッセージの象徴を意味するデザインとした。現在パーティーツリーハウスは、ゲストが焚き火で夕飯を食べたり、パーティーをしたり集いを楽しむ場となっている。
最新のツリーハウスは、黄金トロフィーツリーハウス。京都の金閣寺をインスピレーションに、日本の伝統であるお茶を楽しめる和風のツリーハウスである。ツリーハウスを支える軸の部分は、和の伝統的な形「鼓(つづみ)」。幼少期、軽井沢の別荘にあった鼓の形の椅子を思い出し、このツリーハウスのデザインにした。屋根は和紙で出来ており、夕暮れに電気をつけて外から観ると黄金に光る、是非夜に見て頂きたいツリーハウスが2020年に完成。そして現在は、川の上に浮かび大木をくり抜いた滑り台が付く藍サウナツリーハウスを施工中。
自然を守るため、極力木は切らない。ツリーハウス自体がカーボンニュートラルならぬカーボンネガティブ。地面の中や上に住む動物や植物を邪魔しないため、エアロハウスも含め全ての構築物は地上1.2メートル以上に作る。ツリーハウスを作る際に使う金属ボルトが工場で作られる際に重量比2.2倍の二酸化炭素が発生するため、木製ダボを特許出願。芝刈り機ではなく、ヤギのドナちゃんを採用。コンポストトイレや深夜の余剰電力で水を温めるエコキュートも使用。また塩素による殺菌ではなく手掘りで掘った井戸水を紫外線で殺菌している。塩素が入っている水は不必要に微生物を殺すことになる。現在、古くなった車の蓄電池と太陽光パネルを使用して自分達だけで電気を作るオフグリッドプロジェクトも進めている。持続可能な社会を目指すために、様々な工夫をしている。
色々な壁を乗り越え、7年という長い月日をかけ遂に2021年8月にリゾートとして開業し、曉の子供の頃からの夢がようやく叶った。「自然との共存」というメッセージに共感頂き、地域の方々やチームにサポート頂いて出来たこと。ツリーフルに宿泊するゲストの皆様は、自然との共存の大切さを学び、広めて頂く私たちの大切な「パートナー」である。